2024.10.17更新

遺留分を侵害されている場合は、遺留分侵害額請求を行う必要がありますが、行使期間が限られているため、迅速な対応が必要です。
今回は遺留分とは何か、また遺留分侵害額請求権の行使方法について解説します。

遺留分とは

遺留分とは法定相続人の最低限の取り分のことです。法定相続人には民法の規定に従い、相続分の割合が決められていますが、被相続人が生前贈与を行っていたり遺言により遺贈先を決めていた場合は相続することができません。
この場合でも、遺留分に相当する分は、受贈者等に対して請求することができます。

 

遺留分を有する法定相続人とは

遺留分を有する法定相続人は、兄弟姉妹以外の法定相続人です。

 

● 配偶者
● 直系卑属(子・孫など)
● 直系尊属(両親・祖父母)

 

被相続人の兄弟姉妹には遺留分はありません。
そのため、被相続人の法定相続人が配偶者と兄弟姉妹だけの場合は、遺言書を残すことで、配偶者に全遺産を相続させることができます。

 

遺留分の割合は

原則として、それぞれの法定相続分の2分の1です。
たとえば、配偶者と子3名が法定相続人の場合は、法定相続分と遺留分はそれぞれ次のようになります。

 

  法定相続分 遺留分
配偶者 2分の1 4分の1
子3名 6分の1 12分の1

なお、直系尊属のみが相続人である場合は、3分の1が遺留分になります。

 

遺留分の対象となる財産

遺留分の対象となる財産は、被相続人が相続開始の時において有した財産と生前贈与した財産です。
生前贈与した財産については、持戻しの対象となる年数は贈与の相手により異なります。

 

● 相続人に対する贈与:相続開始前の10年間にしたもの
● 相続人以外への贈与:相続開始前の1年間にしたもの

 

そのため、早めに生前贈与を行っておくことが、遺留分侵害額請求への対応策として有効です。

 

遺留分を無視した遺言の効力

法定相続人の遺留分を無視した遺言も有効です。
そのため、遺留分が主張されることを想定しつつあえて、遺産のすべてを相続させたい人に相続させることも可能です。
さらに、遺産を相続した人を被相続人の生命保険金の受取人に指定し、生命保険金を遺留分侵害額請求を受けた際の支払いの原資とする対策が講じられることもあります。

遺留分侵害額請求とは

遺留分権利者(遺留分を侵害された法定相続人)は、遺留分を侵害している人(生前贈与を受けた人や遺言により遺産をもらった人)に対して、自身の遺留分に相当する金銭の支払いを求めることができます。
これを遺留分侵害額請求権といいます。

 

遺留分侵害額請求権の行使期間

遺留分侵害額請求権は、行使できる期間が限定されています。
具体的には、以下のいずれか早い時までです。

 

● 遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間
● 相続開始の時から10年

 

一般的には、被相続人が亡くなった時から1年経過した時点で遺留分侵害額請求権を行使できなくなります。

 

遺留分侵害額請求権の行使方法

遺留分侵害額請求権の行使方法については特に決まりはありません。
親が亡くなり、その子どもが複数いるにも関わらず、親の遺産が子どもの一人に遺産が集中しているケースでは、子どもたちで話し合うことも可能です。
ただ、行使できる期間が限定されていることから、期間内に請求していることを証するために、相手方に内容証明郵便を送付する方法が確実です。

 

遺留分侵害額の請求調停とは

遺留分侵害額請求に関して当事者間で話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に遺留分侵害額の請求調停を申し立てることもできます。
調停は家庭裁判所で行われますが、通常の訴訟のように法廷で証拠をやり取りするわけではなく、調停委員を介して話し合いを行う形で進められます。
そのため、必ずしも弁護士を代理人に立てる必要はありませんし、ご本人が調停期日に出席して、自分の主張を述べることも可能です。

遺留分侵害額の請求調停で注意したいことは、調停の申立てを行っただけでは、遺留分侵害額請求権の行使期間に権利行使したことにならない点です。
そのため、調停の申立てとは別に相手方に内容証明郵便を送付しておく必要があります。

まとめ

兄弟姉妹以外の法定相続人には、原則としてそれぞれの法定相続分の2分の1(直系尊属のみが相続人の場合、3分の1)に相当する遺留分が認められています。
遺留分を侵害されている場合は、原則として相続開始から1年以内に遺留分侵害額請求権を行使しなければなりません。
実際の相続では、遺留分が侵害されているのかどうか分かりにくいこともありますし、どの財産が遺留分の対象になるのか判断が難しいことも多いです。
遺留分侵害額請求権の行使期間は限られているので、お困りのことがあれば早めに弁護士等の専門家へご相談ください。

投稿者: 棚田 章弘

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