2024.12.11更新

被相続人の遺産の相続方法は、単純承認、限定承認、相続放棄の3種類があります。
通常の相続方法は、単純承認で問題ありませんが、被相続人が多額の借金を抱えていた場合などは、限定承認、相続放棄を選択すべきこともあります。
本稿では、3種類の相続方法をどのように使い分けたらよいのか解説します。

 

3種類の相続方法

相続というと、被相続人(亡くなった人)の遺産を相続人が承継するというだけで、相続方法にはさまざまな種類があるという話はピンとこないかもしれません。
民法には、遺産をどのような形で相続するかという観点から、次の3種類の相続方法が規定されています。

 

 単純承認
 限定承認
 相続放棄

 

それぞれ確認していきましょう。

 

単純承認とは

被相続人の遺産は、相続人が当然に相続するわけではなく、相続するかどうかは相続人が選択することができます。
相続人が相続する場合は承認、相続しない場合は相続放棄になります。

単純承認とは、相続人が被相続人の遺産を単純に相続する場合です。
被相続人の遺産とは、プラスの遺産だけでなくマイナスの遺産、たとえば、借金や債務なども含まれます。
よって、単純承認した場合は、借金も相続することになるため、被相続人の債権者に対して弁済しなければならなくなります。

 

単純承認の方法

単純承認する場合は、単純承認する旨を宣言することもできますが、単純承認する方法については特に決まりはありません。
ただ、次の事由が生じた場合は、法定単純承認として、単純承認をしたものとみなされます。

 

 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。
 相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。

 

一般的には、相続開始から3ヶ月経過すると、自動的に単純承認したことになります。
逆に、単純承認したくない場合、たとえば、借金も相続したくない場合は、3ヶ月以内に限定承認か相続放棄の手続きを行う必要があります。

 

限定承認とは

限定承認とは、被相続人の遺産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることです。
たとえば、被相続人の遺産にプラスの遺産とマイナスの遺産があり、債務超過の状態にあるのか、債務を弁済してもプラスの遺産が残るのかわかりにくいこともあります。
このような場合に、相続開始から3ヶ月で判断することは難しいこともあるため、限定承認することがあります。

 

限定承認の方法

限定承認する場合は、相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。
その際は、申述書と相続財産の目録を作成して提出する必要があります。
なお、限定承認は、相続人の全員が共同してしなければなりません。
被相続人の遺産を相続前に清算する意味があるため、一人でも反対していると限定承認の手続きを進めることができないからです。

 

相続放棄

相続放棄とは、被相続人の遺産を相続しない場合です。
プラスの遺産はもちろん、マイナスの遺産も相続しないので、被相続人の遺産が債務超過の状態にある場合に相続放棄を選択します。
相続放棄した場合は、初めから相続人とならなかったものとみなされます。
また、相続放棄した相続人の直系卑属が代襲相続することはありません。

 

相続放棄の方法

相続放棄する場合は、相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。
相続人が相続放棄すると宣言するだけでは、相続放棄したことにならないため注意が必要です。
また、「相続分がないことの証明書」等の書類に署名しただけでは、プラスの遺産を相続しない意思表示を示したことにはなりますが、マイナスの遺産は、署名した人の意志とは関係なく、当然に相続してしまいます。
そのため、被相続人の借金を相続したくない場合は、家庭裁判所に申述することが重要になります。

 

3種類の相続方法を選択するまでの流れ

単純承認、限定承認、相続放棄のいずれを選択するかは、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に決めなければなりません。
3ヶ月間の流れは次のとおりです。

 

1. 被相続人が亡くなったことを知らされる
2. 戸籍調査を行い法定相続人を確定する
3. 被相続人の相続財産の調査を行う
4. 単純承認、限定承認、相続放棄のいずれを選択する

 

被相続人が亡くなったことを知らされる

ほとんどの法定相続人には亡くなった日に知らせが行くと思います。
そのため、一般的には亡くなった日が3ヶ月の起算点になります。

 

戸籍調査を行い法定相続人を確定する

被相続人が生まれてから亡くなるまでの間の戸籍謄本等を集めて、相続関係図を作成して、法定相続人を確定します。
被相続人が何度か婚姻を繰り返している場合は、前の配偶者との間に子がいることが判明したり、隠し子が発覚することもあります。
連絡を受けた時点で相続人になったことを知った人はその時点が3ヶ月の起算点になります。

 

被相続人の相続財産の調査を行う

被相続人の相続財産を確認したうえで、財産目録の形にまとめます。
プラスの財産はもちろん、マイナスの財産ももれなく調べましょう。

 

単純承認、限定承認、相続放棄のいずれを選択する

被相続人の相続財産の調査結果を見て、3つの相続方法のいずれを選択するか判断します。
単純承認と相続放棄は、相続人一人ひとりが個別に行うことができます。
限定承認の場合のみ、相続人全員が一致して行わなければなりません。

 

まとめ

相続方法には、単純承認、限定承認、相続放棄の3種類があります。
いずれの方法を選択するにしても、その前提として、法定相続人の確定、相続財産の調査といった事務作業を3ヶ月以内に済ませなければなりません。
被相続人が亡くなった直後に落ち着いて、相続財産の調査を行うことは難しいこともあるため、弁護士などの専門家に相談しましょう。

投稿者: 棚田 章弘

2024.11.07更新

近年、電子契約書の利用が広がっています。
電子契約書の利用は業務の効率化やコスト削減につながりますが、注意すべきポイントも存在します。
電子契約書のメリット・デメリットを把握し、業務に役立ててください。

 

電子契約書とは

電子契約書とは、インターネット上で使用する契約書です。
オンラインで契約書の作成から締結まで行えるため、業務の効率化を図れます。
電子契約書を用いた契約は、国や地方自治体などでも導入されています。

 

電子契約書の法的な証拠力

電子署名法では、電子署名を利用した文書には書面での契約と同様に法的な証拠力があるとされています。

電子契約書では、印鑑での押印の代わりに電子署名を利用します。
電子署名は文書を暗号化する仕組みによって、文書の作成者が誰であるかを証明するシステムです。
また印鑑証明書の代わりに電子証明書を利用します。
電子証明書は認証局などが発行するもので、電子的な身分証明書です。

さらにタイムスタンプを付与することで、次の内容が証明されます。

 

● タイムスタンプ付与時にデータが存在していた
● タイムスタンプ付与時からデータの編集が行われていない

 

これらを併用することで、文書作成者のなりすましやデータの改ざんが行われていないことを証明でき、法的な証拠力が担保されます。

 

電子契約書のメリット

電子契約書を利用することで、事業者は次のようなメリットを得られます。

 

保存性に優れている

書面による契約書と違い、電子契約書はサーバー上に保存されるため、オフィスに保管場所を用意する必要がありません。
ファイリングする手間もなく、過去に結んだ契約書を検索することも容易です。
さらに契約書の物理的な劣化が起こらず、紛失するリスクもありません。

 

収入印紙が必要ない

電子契約書による契約は印紙税が課税されません。
書面で契約書を作成する場合には収入印紙の貼り付けが必要となりますが、電子証明書では収入印紙の貼り付けも、別途納税する必要もありません。

大口の契約ではとくに印紙税が高額になるため、電子契約書を利用することで大きな節約効果が生まれます。

 

効率化を図れる

電子契約書はオンラインで送付できるため、郵送代を節約できます。
契約書の送付や返送にかかる時間や事務的な手間も削減でき、スピーディーな取引が可能です。
リモートワークをしている場合にも、事務処理のために出社する必要がありません。

 

不正を防止できる

電子署名やタイムスタンプを利用することで、電子契約書の作成者や作成日時を証明できます。
これにより、改ざんのリスクを下げることが可能です。

さらに電子契約のサービスによっては、契約書の閲覧制限やアクセスログなどが利用できることもあります。
そういったサービスを利用することで、より強力なセキュリティ対策ができます。

 

電子契約書のデメリット

ただし電子契約書には次のようなデメリットも存在します。

 

取引先が電子契約書の利用に応じない可能性がある

電子契約書を利用するためには、電子署名や電子証明書を使用できる環境整備が必要になります。
取引先がシステムに対応していない場合には利用できません。

また取引先が電子契約書の安全性を疑問視し、書面での契約を求めてくることもあります。
電子契約書利用の合意を得られなければ、書面で対応せざるを得ません。

取引先ごとに書面契約と電子契約を使い分けている場合、社内業務が煩雑化し、かえって手間がかかる恐れもあります。

 

サイバー攻撃などのリスクがある

契約書がサーバーに保存されているため、サイバー攻撃やウイルス感染などによって機密情報が洩れてしまうリスクがあります。
常に最新のウイルス対策やセキュリティ対策が必要です。

 

電子契約の法律に対応する必要がある

電子契約書を利用するには、書面で行う契約とは違う法律にも対応しなければいけません。
電子契約には次のような法律があります。

 

● 電子署名法
● 電子契約法
● e-文書法
● デジタル改革関連法
● 電子帳簿保存法

 

たとえばe-文書法では、文書の電子保存について次の要件を満たすよう定められています。

 

● 見読性
● 完全性
● 機密性
● 検索性

 

電子契約の導入は過渡期にあります。
法律の改正も行われているため、常に正しい契約書を作成できているか、正しく保管できているかの確認が必要です。

 

電子契約書に対応していない契約がある

一部の契約では、書面による契約書の作成・交付が義務付けられています。
その場合、電子契約書は利用できません。
ただし将来的に法改正によって電子契約が可能となることも考えられます。
最新の法律に注意が必要です。

 

まとめ

この記事では電子契約書のメリット・デメリットについて解説しました。
電子契約書を利用することで作業を効率化でき、改ざん防止などのセキュリティ対策もできます。
ただし取引先の同意がなければ利用できません。
また、電子契約書に関するすべての法律に対応する必要があります。
電子契約書の導入、トラブル対応は弁護士にご相談ください。

投稿者: 棚田 章弘

2024.10.18更新

不動産賃貸のオーナーは、賃料滞納問題を抱えてしまうケースがあります。
滞納者は決められた日に賃料を払う契約ですが、何らかの理由で払ってもらえないと困ります。
今回は効果的な建物明渡請求について詳しく解説します。

 

建物明渡請求

賃貸借契約は貸主と借主が結ぶ契約で、信頼のうえに成立します。
しかし、賃料の滞納などを理由に信頼が乏しくなるケースがあるでしょう。
建物明渡請求は物件の明け渡しを求めるための法的な手続きです。

 

認められるのは滞納が2ヶ月以上続いたとき

建物明渡請求が認められるのは、具体的な事情にもよりますが、賃料の滞納が2ヶ月以上続いた場合や、信頼性が欠如し契約の維持が難しいと判断された場合です。
ただし、単に賃料が徴収できなかっただけでは、すぐに明渡請求が認められる可能性は低いです。

 

動いてくれる範囲

法律事務所は相談や出廷、明渡完了までサポートしてくれます。
不動産問題解決のために、任意交渉したけれども、進展が難しい場合、頼りになるのが専門家の弁護士です。
不動産を取り扱う法律事務所にまずは、相談してみましょう。

 

滞納者に立ち退きを請求する

滞納が続けば、立ち退いてもらうよう促します。
滞納者が立ち退きを言い渡された後、速やかに部屋を明け渡してくれれば、次の借主から賃料を得られます。

 

立ち退きを命じる方法

任意で交渉をしたり裁判で強制的に退去を求めたりする方法もあります。
滞納者に、どの程度退去してもらいたいのか、また賃料が回収できる可能性によって交渉方法は変わるでしょう。

 

立ち退き請求に応じない

立退交渉がうまく進まないケースもあります。
相手が交渉に応じないなら、裁判を行う必要性が高くなるでしょう。
裁判所の手続きによるべきという自力救済の禁止という原則があるからです。
勝手に家具を処分したり、鍵の交換により部屋に入れなくしたりする問題を防ぐためにあります。

 

滞納者に明け渡しを請求する

一般的な賃料滞納による明け渡しを請求する流れを紹介します。

 

簡単な流れ

明渡請求の簡単な流れは以下の通りです。

● 内容証明郵便で賃料の一括払いを請求
● 一括払いの期限設定
● 期限内に支払わない場合は賃貸借契約の解除
● 任意に明け渡さないなら明渡訴訟を起こす
● 裁判で明渡が認められる
● 明渡の強行執行

賃料を滞納している事実が判決をくだす可能性を高めるでしょう。

 

明渡請求決定後の課題

裁判で明渡が認められても課題が残ることもあります。
たとえば明け渡し後部屋を確認したら家具などが置きっぱなしになっていたり、退去しない状態が続いたりすることもあるでしょう。

 

明渡執行

裁判所の執行官に対して明渡強制執行の申し立てを行う必要があります。
執行から完全に明け渡すまで、概ね2ヶ月は見積もっておくといいでしょう。

 

滞納した賃料は保証される?

さて滞納された賃料は保証されるのでしょうか。
滞納者が行方不明になった場合本人からの徴収は難しいですし、行方を探す手間や時間も要します。
賃料の回収が難しいことを考えると、賃料の滞納が始まった早期の段階できちんと対処をしておくことが大切です。
滞納が進んでから明渡しをしてもらうと回収できない滞納額が大きくなるからです。
滞納額が大きい場合と小さい場合とで明け渡しにかかる費用は変わりませんから、滞納額が小さいときに対処するのが重要になるわけです。

なお、賃料を保証してくれる会社もあります。

 

保証してくれる機関

家賃を保証してくれる家賃保証会社は滞納に対して立替払いしてくれるため、安心です。
契約する際に保証人を立てるケースもありますが、親や親族が保証人要件を満たさなかったり周囲の人に保証人を頼みにくかったりする際に利用します。
賃貸保証会社の利用は、オーナーが決めるのが一般的で最近の賃貸物件は、賃貸保証会社の利用を義務付けているケースも多くなっています。

 

まとめ

家賃滞納に困っているオーナー様向けに解決方法を紹介しました。
ご相談から出廷、明渡完了まで心強いサポートは専門機関である法律事務所です。
不動産の賃貸トラブルや共有解消、賃料増額減額請求をご検討中でしたら、棚田法律事務所にご相談ください。

 

投稿者: 棚田 章弘

2024.10.17更新

遺留分を侵害されている場合は、遺留分侵害額請求を行う必要がありますが、行使期間が限られているため、迅速な対応が必要です。
今回は遺留分とは何か、また遺留分侵害額請求権の行使方法について解説します。

遺留分とは

遺留分とは法定相続人の最低限の取り分のことです。法定相続人には民法の規定に従い、相続分の割合が決められていますが、被相続人が生前贈与を行っていたり遺言により遺贈先を決めていた場合は相続することができません。
この場合でも、遺留分に相当する分は、受贈者等に対して請求することができます。

 

遺留分を有する法定相続人とは

遺留分を有する法定相続人は、兄弟姉妹以外の法定相続人です。

 

● 配偶者
● 直系卑属(子・孫など)
● 直系尊属(両親・祖父母)

 

被相続人の兄弟姉妹には遺留分はありません。
そのため、被相続人の法定相続人が配偶者と兄弟姉妹だけの場合は、遺言書を残すことで、配偶者に全遺産を相続させることができます。

 

遺留分の割合は

原則として、それぞれの法定相続分の2分の1です。
たとえば、配偶者と子3名が法定相続人の場合は、法定相続分と遺留分はそれぞれ次のようになります。

 

  法定相続分 遺留分
配偶者 2分の1 4分の1
子3名 6分の1 12分の1

なお、直系尊属のみが相続人である場合は、3分の1が遺留分になります。

 

遺留分の対象となる財産

遺留分の対象となる財産は、被相続人が相続開始の時において有した財産と生前贈与した財産です。
生前贈与した財産については、持戻しの対象となる年数は贈与の相手により異なります。

 

● 相続人に対する贈与:相続開始前の10年間にしたもの
● 相続人以外への贈与:相続開始前の1年間にしたもの

 

そのため、早めに生前贈与を行っておくことが、遺留分侵害額請求への対応策として有効です。

 

遺留分を無視した遺言の効力

法定相続人の遺留分を無視した遺言も有効です。
そのため、遺留分が主張されることを想定しつつあえて、遺産のすべてを相続させたい人に相続させることも可能です。
さらに、遺産を相続した人を被相続人の生命保険金の受取人に指定し、生命保険金を遺留分侵害額請求を受けた際の支払いの原資とする対策が講じられることもあります。

遺留分侵害額請求とは

遺留分権利者(遺留分を侵害された法定相続人)は、遺留分を侵害している人(生前贈与を受けた人や遺言により遺産をもらった人)に対して、自身の遺留分に相当する金銭の支払いを求めることができます。
これを遺留分侵害額請求権といいます。

 

遺留分侵害額請求権の行使期間

遺留分侵害額請求権は、行使できる期間が限定されています。
具体的には、以下のいずれか早い時までです。

 

● 遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間
● 相続開始の時から10年

 

一般的には、被相続人が亡くなった時から1年経過した時点で遺留分侵害額請求権を行使できなくなります。

 

遺留分侵害額請求権の行使方法

遺留分侵害額請求権の行使方法については特に決まりはありません。
親が亡くなり、その子どもが複数いるにも関わらず、親の遺産が子どもの一人に遺産が集中しているケースでは、子どもたちで話し合うことも可能です。
ただ、行使できる期間が限定されていることから、期間内に請求していることを証するために、相手方に内容証明郵便を送付する方法が確実です。

 

遺留分侵害額の請求調停とは

遺留分侵害額請求に関して当事者間で話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に遺留分侵害額の請求調停を申し立てることもできます。
調停は家庭裁判所で行われますが、通常の訴訟のように法廷で証拠をやり取りするわけではなく、調停委員を介して話し合いを行う形で進められます。
そのため、必ずしも弁護士を代理人に立てる必要はありませんし、ご本人が調停期日に出席して、自分の主張を述べることも可能です。

遺留分侵害額の請求調停で注意したいことは、調停の申立てを行っただけでは、遺留分侵害額請求権の行使期間に権利行使したことにならない点です。
そのため、調停の申立てとは別に相手方に内容証明郵便を送付しておく必要があります。

まとめ

兄弟姉妹以外の法定相続人には、原則としてそれぞれの法定相続分の2分の1(直系尊属のみが相続人の場合、3分の1)に相当する遺留分が認められています。
遺留分を侵害されている場合は、原則として相続開始から1年以内に遺留分侵害額請求権を行使しなければなりません。
実際の相続では、遺留分が侵害されているのかどうか分かりにくいこともありますし、どの財産が遺留分の対象になるのか判断が難しいことも多いです。
遺留分侵害額請求権の行使期間は限られているので、お困りのことがあれば早めに弁護士等の専門家へご相談ください。

投稿者: 棚田 章弘

2024.08.22更新

企業間や個人で業務委託契約などを結ぶ際に、NDA(秘密保持契約書)と呼ばれる契約を結ぶことがあります。
このNDA(秘密保持契約書)とは、いったいどのようなものなのでしょうか。
この記事ではNDA(秘密保持契約書)がどのような時に使われるか、また必要な記載事項について解説します。

NDA(秘密保持契約書)とは?

NDA(秘密保持契約書)とは、取引において知った以下のような事柄を、取引目的以外で第三者に漏らさないことを定めた契約書です。

・取引を行う際に必要な営業秘密
・社内の情報
・顧客に関する個人情報

NDA(秘密保持契約書)はどのような時に使われる?

NDA(秘密保持契約書)はどのような時に使われるか説明します。

業務委託や他社への外注

たとえば、自社製品の説明書を他社に書いてもらう場合や、デザインを他社に任せる場合などが考えられます。
すべて自社でまかないたいけれども、そこまで行うには人手が足りない、設備が自社にないなどといった場合には業務委託や他社に外注することがあります。

他社との業務提携の場面

他社との業務提携の場面でも、秘密事項に関しての説明事項があった方が良いでしょう。
なぜならば、業務提携となると顧客情報を教えなければならなくなるからです。
もしも、顧客情報を外部に漏らされたら、信用問題に関わります。

新規取引を検討する場合

今まで付き合いのない会社と新規取引を検討する場合も、秘密事項に関しては正しく理解してもらいたいものです。

新規取引となれば、社内の情報も共有しなければならないことがあります。
万が一外部に漏らされてしまうと、自社独自の製品で漏らしたくない事項などが外部に流失してしまうかもしれません。

(NDA)秘密保持契約の締結はいつ?

(NDA)秘密保持契約は秘密情報のやり取り前に締結することをおすすめします。
仮に秘密情報のやり取り後の締結だとすると、すでに秘密情報が漏らされている可能性も考えられるからです。
秘密保持契約は、秘密情報のやり取りが発生する前の段階で締結することが望ましいです。
開示される情報の管理体制や権利義務関係について双方が合意した後に、情報が開示されなければ、その合意前に開示された情報が秘密として取り扱われない、それを受領者に利用されてしまうなどのリスクが生じうるためです。

しかし、やり取り前の段階となると、マニュアル作りを急がなければいけません。
また、きちんと禁止事項についての記載がないと誤解してしまう人がいる可能性もあります。
一から作るのは大変ですがひな形などをダウロードできますので、上手く利用しましょう。
そして、きちんと印刷して外部にも渡したいものです。
危機管理体制のある企業ということを取引先などに知っておいてほしいものでしょう。

(NDA)秘密保持契約に盛り込む事柄の例

では、具体的に(NDA)秘密保持契約にはどのようなことを盛り込めばよいのか、詳しく見ていきましょう。

機密情報の定義

まずは機密情報の定義をきちんと定めておくことが大切です。
秘密情報の例などを出してわかりやすく定義付けます。

管理方法

秘密漏えいを管理することも示しておきましょう。
きちんと管理されていることを相手に知らせておくことは大事です。

内容について

秘密情報を漏らさないことについて、お互いに気を付けることなど、内容がどのようになっているか書きます。
企業秘密を徹底していることが相手にわかるように記載しましょう。

例外に関すること

例外的ですが、秘密保持義務の対象とならないケースもあることも書いておきます。
そのようなケースについて定める規定があることも書いておくべきです。

期間について

秘密保持義務を守らなければならない期間がいつからいつまでか、わかりやすく記載します。

事故発生時の報告

万が一の秘密情報の漏えい事故が起こった場合を想定してください。
そのような時の対処法として、速やかに報告する旨を記載しておきます。

制裁について

秘密保持義務の違反があったときについての制裁も記載したいものです。
万が一のために損害の賠償、取引関係の解除などの制裁があることも書いておけば安心です。
相手も情報を漏らすことのリスクを認識するでしょう。

合意管轄について

もしも秘密保持義務の違反で大きな損害を被って裁判に発展した場合についても記載します。
そして、その際は、どこの裁判所が審理するかも記載しておくと丁寧です。

まとめ

NDA(秘密保持契約書)についてお伝えしました。
NDA(秘密保持契約書)は他社との業務提携、外部発注など、外部の人と関わる場合に社内のみが知っているような情報を離さないようにしてほしいことなどが記載してあります。
万が一の情報漏れを防ぐためには、作成しておいた方が良いでしょう。
こうしたNDA(秘密保持契約書)作成などの契約書については非常に重要となりますので、弁護士に相談することを検討してみてください。

 

投稿者: 棚田 章弘

2024.07.10更新

家族・親族が亡くなると、遺産の相続が必要になります。
遺産の相続に関しては、問題が発生しやすいこともありますので、順序通りに的確に処理していく必要があります。
また、遺産相続の手続には期限が設定されているものも少なくありません。
この記事では、被相続人が亡くなった場合の相続の流れと、それぞれの期限に関して解説していきます。

相続の流れを解説

まずは被相続人が亡くなってから、遺産相続手続を始めるまでの流れを解説していきましょう。

 

1. 法定相続人を確定する
2. 遺言書の有無を確認する
3. 相続財産を確定する
4. 相続放棄をするかどうかを決める
5. 遺産分割協議を行い協議書を作成する
6. 相続手続を始める

 

それぞれの段階ですべきことなどを解説していきます。

法定相続人を確定する

まずは誰が遺産相続の権利を持っているのかを確定させる必要があります。
遺産相続の権利を持つ方を法定相続人と呼び、その決め方は以下の通りです。

 

・配偶者 必ず相続権を持つ
・相続順位 1位 「子」
・相続順位 2位 「両親」
・相続順位 3位 「兄弟・姉妹」

 

まず、亡くなった方の配偶者は無条件で法定相続人です。
そのうえで子がいる場合、子が法定相続人となります。
相続順位第1位の子が法定相続人となる場合、2位と3位の両親、兄弟・姉妹は法定相続人とはなりません。
この考え方をもとに、法定相続人を確定させます。

遺言書の有無を確認する

被相続人の方が亡くなったタイミングで、遺言書の有無を確認しておきましょう。
遺言書がある場合、被相続人による相続の希望が記されていますので、その希望を確認しながら以下の行程を進めていきます。

相続財産を確定する

残された遺族のなかで法定相続人の方が中心となり、相続すべき財産を確定させます。
預貯金などの現金はもちろんのこと不動産や自動車などの動産、有価証券などが相続すべき財産の代表的なものです。
また、相続すべき財産には、一部マイナスの財産も含まれます。
借入金などがある場合は、その借入金が相続しなければいけないものかどうかも併せて確認しておきましょう。

相続放棄をするかどうかを決める

法定相続人が決まって相続すべき財産が確定し、さらに被相続人の方の希望を踏まえた上で、相続放棄すべきかどうかを決定します。
相続放棄に関しては、法定相続人がそれぞれ自身の判断で決定できます。

遺産分割協議を行い協議書を作成する

相続を希望する人が確定したら、相続を希望する法定相続人同士で遺産分割協議を行います。
相続分に関しては、法で定められた割合があります

とはいえ、相続する財産がすべて現金というわけではありませんので、残された財産をどのように分割するかを決定し、その結果を遺産分割協議書に残しましょう。

相続手続を始める

ここまでのすべての行程が完了できれば、初めて相続手続に入ります。
不動産の名義変更や預貯金の凍結の解除など、適切に処理していきましょう。

遺産相続に関するいろいろな期限

続いて、遺産相続に関するさまざまな期限を確認していきます。
ここではとくに相続に関することに限定して期限を紹介しましょう。

自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内にすべきこと

被相続人の死亡後、もしくは自身に相続権があることを知ってから3ヵ月以内にすべきことは相続放棄の申し出です。

上の手順と併せて考えると、少なくとも3か月以内に相続すべき財産を確定させなければいけません。
また限定承認の期限も、自身に相続権があることを知ってから3ヵ月以内です。

相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヵ月以内にすべきこと

被相続人の方が亡くなってから4ヵ月以内に、準確定申告を行いましょう。
準確定申告とは被相続人の方が確定申告を必要とする方だった場合、4ヵ月以内に亡くなる日までの確定申告を遺族の方が行わなければいけません。

相続の開始があったことを知った日から10ヵ月以内にすべきこと

10ヵ月以内に行うのが、以下の手続です。

 

・遺産分割協議書の作成
・預貯金の解約・名義変更
・相続税の申告・納付

 

遺産分割協議書に関しては上の項で説明した通りです。
被相続人の方の預貯金の解約や名義変更もこのタイミングで終わらせる必要がありますので、遺産分割協議書が完成した時点ですぐに行いましょう。
厳密に言えば、遺産分割協議書の作成に期限は設けられていません。
しかし、遺産分割協議書が作成できない状態ですと、相続税の申告と納付が難しくなります。
遺産分割協議書は、相続の開始があったことを知った日から10ヶ月以内に作成できるようにするのがおすすめです。

相続税の申告・納付は原則10ヵ月以内ですので、時間がない場合の対応などに関しては、弁護士等に相談するのがおすすめです。

相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年以内にすべきこと

遺産相続の分配率は、原則法で定められています。
この分配率に反した遺産相続があり、被害を被ったという場合は遺留分侵害請求ができます。
この遺留分侵害請求の時効が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ってから1年間となっていますので、遺留分侵害請求を行う場合は、1年以内が期限となります。

そのほか期限が設定されているもの

以下の2つに関しても、それぞれ期限が設定されています。

 

・高額療養費の申請
・葬祭費・埋葬料の申請

 

高額療養費とは、被相続人が亡くなる前に支払った医療費や薬局に支払った金額が一定金額を超えている場合に受け取れるものです。
高額療養を受けた翌月の1日から2年以内に申請を行う必要があります。

被相続人の方が国民健康保険・後期高齢者医療制度に加入していた場合は葬祭費、国民健康保険に加入していた場合は埋葬料が支給されます。
葬儀の日から2年以内に申請しましょう。

さらに、それぞれの起算日から3年以内にすべきことは、以下の2点です。

 

・相続登記
・死亡保険金の受取

 

被相続人の死亡により不動産を相続した方は、相続登記を行うことが義務化されました。
自身にその不動産を相続する権利があることを知ってから3年以内に行う必要があり、難しい場合は相続人申告登記という方法もあります。

死亡保険金に関しては相続とは直接関係ありませんが、被保険者の死亡から3年以内が請求期限となっています。

まとめ

家族が亡くなると、残された遺族はさまざまな手続をしなければいけません。
とくに遺産相続に関してはすべきことが多岐にわたるため、整理して期限内に対応する必要があります。
まずは、その順序を知って手順通りに進めていくことが重要ですが、自身では対応が難しい場合は、無理せず弁護士を頼るのがおすすめです。
とくに法定相続人が多い場合などは、弁護士に的確なアドバイスをもらうのがポイントとなりますので、相続問題に強い弁護士に相談しましょう。

投稿者: 棚田 章弘

2024.06.12更新

大きなお金の動く不動産取引では、トラブルもしばしば起こります。
何か不動産をめぐって問題が発生しているようであれば、弁護士に相談するのも手段のひとつです。
弁護士に相談することで、納得できる形で問題解決できる可能性が高いからです。
本記事では不動産トラブルの際に弁護士に相談するメリットについて紹介していきたいと思います。

弁護士に不動産トラブルの相談するメリット

弁護士に不動産トラブルを相談することで問題解決しやすくなります。
というのも弁護士は法律の専門家であるからです。

代理人をお願いできる

弁護士に問題解決の依頼をすることで、法的根拠に基づいたアドバイスが受けられます。
また必要に応じて、代理人として先方との交渉を任せられるのもメリットの一つです。

第三者である弁護士が代理人として話し合いに参加することで、当事者双方冷静になりやすくなります。
感情的にならずに、事実と法律に基づき解決できます。

訴訟になった場合の準備ができる

弁護士が間に入っても、問題解決できない場合ももちろんあります。
すると訴訟に発展する可能性も出てくるでしょう。

しかし弁護士をつけておけば、訴訟に対しても慌てることなく準備をお願いできます。
裁判の専門家がついているので、自分たちに有利な条件で判決を受けられるかもしれません。

不動産トラブルを自分で対処するのは困難

「弁護士費用が掛かるのでできる事なら自分で解決したい」と思っている人もいるでしょう。
しかし現実的には非常に難しいと考えるべきです。

不動産の専門用語が出てくる

不動産取引に関して、業界ならではの専門用語がいろいろと出てきます。
また不動産業界独特の仕組みについても理解しておかないといけません。

もし自分で事に当たろうとすると、これらの勉強をしておく必要があります。
しかし弁護士に依頼すれば、自分で専門用語など覚えることなく任せられます。

訴訟になれば法律用語にも精通しなければならない

不動産トラブルがこじれれば、訴訟に発展する可能性があります。
すると一般人には難解な法律用語が飛び交いますし、訴訟に向けての書類も作成しないといけません。
ここまでくると、一般人の手には負えないでしょう。

弁護士は裁判のプロなので、訴訟に発展してもしっかり対応できます。
精神的・肉体的な負担も軽減できるでしょう。

こんな時に弁護士に相談すべき

不動産問題が起きた場合に弁護士に相談するのはおすすめです。
では具体的にどのようなシチュエーションで利用を検討すべきか、以下で紹介します。

 

リーガルチェック

不動産取引では大きなお金が動きます。
そこで契約書を作成して、取引に関する決まり事を文書にして残すのが一般的です。
不動産売買契約書だけでなく、管理に関する契約書、サブリース契約書などがあります。
また賃貸を借りる際にも契約書を作成します。
不動産売買の際には重要事項説明書も作成しないといけません。

このとき弁護士にお願いして、法的に問題はないかチェックしてもらうといいでしょう。

いわゆるリーガルチェックと呼ばれるものです。

最近ではネットで検索にかければ、不動産取引に関する各種契約書のテンプレが公開されています。
テンプレを使用すれば、契約書は作成できるかもしれませんがそのまま流用すれば、実際の取引内容と異なる項目が含まれたり、細かなリスクマネジメントができなかったりなどの不備が発生しやすくなります。
その結果、厄介なトラブルに発展するかもしれません。
そこで弁護士に契約書の内容に関して、リーガルチェックをお願いします。
そしてトラブルを回避するためにはどのような契約書にすればいいか、助言してもらいます。
もちろん、弁護士にお願いして契約書を作成してもらうことも可能です。

不動産事業に関する相談

不動産事業を営んでいる事業者は、顧問弁護士をつけている場合も少なくありません。
もし顧問弁護士がいれば、何か不動産ビジネスに関するトラブルが発生した場合、いつでも相談できます。
顧問弁護士に早めに相談すれば、早い段階で専門家に対応してもらえます。
別に事業者でなくても、個人も弁護士に早めに相談すればトラブル予防できるかもしれません。

まとめ

今回は不動産に関するトラブルを弁護士に依頼するメリットについて紹介していきました。
不動産取引は大きなお金が動きますし、また契約書も業界特有の用語も頻出するので、自力ですべて理解するのは非常に困難です。
弁護士に相談することで、不動産トラブルが起きてもこちらの有利なように対応してくれるでしょう。

投稿者: 棚田 章弘

2024.05.29更新

ビジネスをするにあたって、契約書を作成する場合も多いでしょう。
しかし契約書を作成しても、その内容に法令違反などのトラブルが発生すると後々問題になります。
そこで必要なのが、今回紹介するリーガルチェックです。

 

リーガルチェックを行う必要性

結論から言うと、契約締結時事前にリーガルチェックをしておくことで、さまざまな問題を回避できます。
なぜリーガルチェックが必要なのか、その理由についていくつかピックアップしました。

 

不利な契約条項を事前に発見できる

とくに取引相手から提示された契約書で起こりがちなトラブルです。
相手の方に有利な条項が盛り込まれていてもそれを発見できずに署名・捺印してしまって、不利な条件での取引を強いられてしまいます。

もしリーガルチェックを行えば、このような不利な条件も発見して指摘できます。
不利な立場でのビジネスを強いられて、不利益を被らずに済みます。

 

実際の取引内容に即しているか確認できる

実際の取引に合わない内容の契約書にサインしてしまう恐れを回避できるのが、リーガルチェックです。
「取引内容に合わない契約書など作成されるのか?」と思う人もいるでしょう。しかし実際には契約書作成を担当した人に十分な知識がなかったり、テンプレをそのまま流用したりすると実際の条件に合致しない契約書ができあがってしまうこともあります。

しかしリーガルチェックをしておけば、内容のおかしいことに気づけるはずです。
もしおかしな内容のままで署名・捺印してしまうと、想定していなかった義務が発生して、作業効率の低下にもつながりかねません。

 

明確な契約書を作成できる

リーガルチェックすることで、不明点について確認することが可能です。

当初の契約内容があいまいで複数解釈できるような内容だと、当事者間で見解の相違が起こりトラブルになります。

しかしリーガルチェックで、あいまいな部分をあぶりだし、具体的かつ明確な条文にすることでこのような見識の相違を起こりにくくできます。

専門家によるリーガルチェックで、あいまいな言葉を明確にしたり、間違った言葉を修正したりして内容の発揮した契約書を作成できます。

紛争リスクを回避するためにも、リーガルチェックを行うべきです。

 

契約の無効を回避できる

リーガルチェックを行う目的として、法律などルールに則さない内容の有無を確認することも挙げられます。

いくら同意があったとしても、公序良俗に反したり、消費者契約法などの関連法規に違反したりすると最悪契約書そのものが無効になる可能性もあります。

違反の内容次第では行政処分や行政指導の対象になることもあり得ます。

営業停止や営業許可の取り消しなど厳しい処分を受ける可能性もあるので、リーガルチェックで法的な問題点の有無を確認することは大事です。

 

リーガルチェックをするには?

リーガルチェックの必要性がわかったところで、具体的にどのように行うかについて見ていきます。
またリーガルチェックをするにあたっての注意点についてもまとめましたので、参考にしてください。

 

リーガルチェックの一般的な手順

リーガルチェックの手順を簡潔にまとめると、以下の通りです。

 

・契約書の準備
・自社情報の準備
・内容の整理
・弁護士に相談

 

まずは今回締結することになった契約書を用意しましょう。

初めてリーガルチェックを依頼する場合、先方が自社について理解してもらうために自社情報を整理しておきましょう。

会社の資本金や従業員数が変わってくると、適用される法律が変わったり、基準が別になったりする場合もあります。

チェックする側が会社に関する正しい情報を把握していないと、リーガルチェックも意味をなさなくなるかもしれません。自社の法務部などがリーガルチェックするのであれば、こちらの工程は必要ありません。

弁護士など専門家に契約書に関する説明ができるように、内容について整理しておきましょう。

今回の契約書によって、どのような条件の下で合意したいのかも弁護士に説明できるように準備しておきましょう。

また契約書の中で気になる事柄があれば、弁護士にその部分も指摘できるようにしておくといいです。

準備万端となったところで、弁護士にリーガルチェックの相談をします。

 

リーガルチェックの際の注意点

もしリーガルチェックを弁護士事務所など、外部の専門家に委託する場合費用がかかります。

費用は依頼内容によって変わってきます。契約情報に法令違反がないか、簡潔なチェックであれば3万円程度です。

リーガルチェックのほかにも契約締結にあたってアドバイスが欲しければ、5~10万円が相場といわれています。

ただ依頼する事務所の規模によっても変わってくるので、見積もりを出してもらうといいでしょう。

 

まとめ

法的なことに関して十分な知識を持たない人が作成した契約書だと、法律に問題のある条項が盛り込まれているかもしれません。

またこちらが不利になる内容が含まれているかもしれないので、専門家によるリーガルチェックは忘れずに行うべきです。

自社の法務部があればそちらでチェックできますが、中小企業など法務部がない場合弁護士事務所に契約書の確認をお願いするのがおすすめです。

投稿者: 棚田 章弘

2016.11.11更新

賃料増額,賃料減額の裁判を提起した場合,どのように裁判は進むのでしょうか。

争点は,賃料が高いか,安いかですから,訴える原告が自分の考える適正賃料を主張し,証拠によって,証明していくことになります。

一方,訴えられた被告としては,現行の賃料が適正であることを証拠によって立証します。

双方,不動産鑑定士の鑑定書を用いて立証したり,裁判所が選任する鑑定人の鑑定によって,適正賃料の証明がなされます。

賃料減額の裁判が確定した場合,貸主は,裁判によって決められた賃料とそれまで受け取っていた賃料の差額を支払い,かつ,1割の利息を支払います。

逆に,賃料増額の裁判が確定した場合,借主は,裁判によって決められた賃料とそれまで払っていた賃料との差額を支払い,かつ,1割の利息を支払うことになります。

 

投稿者: 棚田 章弘

2016.11.08更新

賃貸借契約をしていて,相場に比べて賃料が安い,または高いと感じる場合があります。

こういった場合,賃料の増額や減額をすることができるのでしょうか。

借地借家法によれば,「土地に対する租税その他公課の増減により,土地の価格の上昇もしくは低下その他の経済的事情の変動により,又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは,契約の条件にかかわらず,当事者は,将来に向かって地代等の増減を請求することができる。」

とされています。

よって,様々な事情により,賃料が不相当だ,ということであれば,相手方に請求することによって,賃料の増減額請求をすることができます。

もっとも,賃借人,賃貸人がこれに応じてくれるかは,請求を受けた賃借人,賃貸人次第です。

その増額請求について,賃借人が「いや,今の賃料が適正だ。」と思えば,現行の賃料を支払っておけばよいことになっています。

反対に,請求を受けた賃貸人が「いや,今の賃料が適正だ,」と思えば,現行の賃料を請求してもよいことになっています。

 

このように,増額額請求は,直ちに法的に賃料の増減を相手方に強制することはできません。

増減額請求の効力を法的に生じさせたい場合,相手方に対して,賃料増額,賃料減額の裁判を定期することになります。

次回では,賃料増額,賃料減額の裁判をした場合の効果について記載したいと思います。

投稿者: 棚田 章弘

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