2016.06.29更新

不倫相手に自分の亡き後に遺産を遺贈するという内容の遺言は有効なのでしょうか。

この点,古い判例ですが,大審院昭和18年3月19日判決は,遺言者が死ぬまで妾として同棲することを条件として金銭を遺贈するとの遺言は公序良俗に反するものであるとして,無効としています。

 そのほかにも,福岡地裁小倉支部の昭和56年4月23「日判決は,不倫関係にある女性に遺産の10分の3を与えるとする遺言を公序良俗に反するものとして無効としています。

同判決は,遺言者が妻と通常の夫婦関係が続いていたこと,不倫相手が遺言者と苦楽をともにしているわけでもなく,家族以上の世話をしていたわけでもなかったこと,不倫相手が遺言者の生前から相当程度の経済的援助を受けていたことなどを理由に遺言を無効としています。

同判決は,上記のような事情にかんがみて,遺言を無効としたので,不倫相手に対する遺贈=無効という単純な図式にはならず,遺言が有効になる余地はありそうではありますが,基本的に,夫婦関係が破綻していない状態で,不倫相手に遺贈したり,遺贈の目的が不貞の継続を目的とするものであったりする場合には,上記の結論に至ることが多いと思われます。

なお,夫婦関係破綻後であった場合には,別の結論になりえますが,こちらは次回に解説したいと思います。

投稿者: 棚田 章弘

2016.06.15更新

借家人が死亡した場合,借家人について相続が発生します。

借家人(賃借人)が死亡し,複数の相続人がいる場合には,共同相続となります。

共同相続は,民法上,共有とされているため,賃借人の地位が法廷相続分に分かれて相続されることになります。

例えば,2名の子の共同相続人がいる場合には,2名がそれぞれ2分の1ずつ割合で賃借権を有することになります。

では,請求できる賃料は,2分の1だけかというとそうではなく,それぞれの相続人に対し,全額を請求できます。

(ただし,契約賃料以上の額を請求できるわけではなく,誰か一人が全額支払ったら,ほかの相続人には請求できません。)

賃貸人としては,お金を払ってくれるだけの資力がある相続人に請求すればよいわけです。

 

では,相続人が賃料を支払ってくれない場合の解除はどうすればよいでしょうか。

この場合,相続人の一人に対する催告は,他の相続人との関係では効果がなく。

相続人の全員に賃料を支払うよう催告する必要があります。

そして,契約の解除の通知も共同相続人の全員に対してしなければなりません。

 

このため,借家人(賃借人)に相続が発生したときに,契約の解除をするには注意して解除手続を踏まないと,

催告したはいいが,全員にしていなかったためにやり直しが必要になってくる場合があります。

投稿者: 棚田 章弘

2016.06.01更新

前回の記事では,夫が不倫相手に対して遺贈する旨を記載した遺言が公序良俗に反して無効とされた例を挙げました。

 

しかし,事実上破綻しており,籍は入っているけれども,実態は夫婦とは言えない場合には,結論が異なってくる場合があり得ます。

 

仙台高裁平成4・9・11は,離婚していない夫婦の夫から内縁の妻に対する遺贈を有効であると判断しました。

この事例では,以下の点が考慮されて有効と判断されたものと思われます。

1 遺言者である夫と妻は婚姻関係にはあったが,妻との不仲が続いており,別居期間も長く,夫婦関係は事実上破たんしていた。

2 遺言者は,生前に妻に対して,居住する土地建物の遺言者持分を贈与していたほか,退職金のうち1000万円を贈与していた。

3 遺言者と内縁の妻と同棲は,遺言者と妻の婚姻破綻より後のことであった。

4 遺贈の対象となっている土地建物は,別居後に遺言者が購入したものであること

5 遺言者の遺贈の意図は内縁の妻の将来の生活保障にあったこと

 

個人的には,大きく影響するのは,妻との間の婚姻関係が継続していたと認められるかどうか,相続人への影響の大小などの事由であると考えます。

 

投稿者: 棚田 章弘

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