相続方法の種類について解説
2024.12.11更新
被相続人の遺産の相続方法は、単純承認、限定承認、相続放棄の3種類があります。
通常の相続方法は、単純承認で問題ありませんが、被相続人が多額の借金を抱えていた場合などは、限定承認、相続放棄を選択すべきこともあります。
本稿では、3種類の相続方法をどのように使い分けたらよいのか解説します。
3種類の相続方法
相続というと、被相続人(亡くなった人)の遺産を相続人が承継するというだけで、相続方法にはさまざまな種類があるという話はピンとこないかもしれません。
民法には、遺産をどのような形で相続するかという観点から、次の3種類の相続方法が規定されています。
単純承認
限定承認
相続放棄
それぞれ確認していきましょう。
単純承認とは
被相続人の遺産は、相続人が当然に相続するわけではなく、相続するかどうかは相続人が選択することができます。
相続人が相続する場合は承認、相続しない場合は相続放棄になります。
単純承認とは、相続人が被相続人の遺産を単純に相続する場合です。
被相続人の遺産とは、プラスの遺産だけでなくマイナスの遺産、たとえば、借金や債務なども含まれます。
よって、単純承認した場合は、借金も相続することになるため、被相続人の債権者に対して弁済しなければならなくなります。
単純承認の方法
単純承認する場合は、単純承認する旨を宣言することもできますが、単純承認する方法については特に決まりはありません。
ただ、次の事由が生じた場合は、法定単純承認として、単純承認をしたものとみなされます。
相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。
相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
一般的には、相続開始から3ヶ月経過すると、自動的に単純承認したことになります。
逆に、単純承認したくない場合、たとえば、借金も相続したくない場合は、3ヶ月以内に限定承認か相続放棄の手続きを行う必要があります。
限定承認とは
限定承認とは、被相続人の遺産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることです。
たとえば、被相続人の遺産にプラスの遺産とマイナスの遺産があり、債務超過の状態にあるのか、債務を弁済してもプラスの遺産が残るのかわかりにくいこともあります。
このような場合に、相続開始から3ヶ月で判断することは難しいこともあるため、限定承認することがあります。
限定承認の方法
限定承認する場合は、相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。
その際は、申述書と相続財産の目録を作成して提出する必要があります。
なお、限定承認は、相続人の全員が共同してしなければなりません。
被相続人の遺産を相続前に清算する意味があるため、一人でも反対していると限定承認の手続きを進めることができないからです。
相続放棄
相続放棄とは、被相続人の遺産を相続しない場合です。
プラスの遺産はもちろん、マイナスの遺産も相続しないので、被相続人の遺産が債務超過の状態にある場合に相続放棄を選択します。
相続放棄した場合は、初めから相続人とならなかったものとみなされます。
また、相続放棄した相続人の直系卑属が代襲相続することはありません。
相続放棄の方法
相続放棄する場合は、相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。
相続人が相続放棄すると宣言するだけでは、相続放棄したことにならないため注意が必要です。
また、「相続分がないことの証明書」等の書類に署名しただけでは、プラスの遺産を相続しない意思表示を示したことにはなりますが、マイナスの遺産は、署名した人の意志とは関係なく、当然に相続してしまいます。
そのため、被相続人の借金を相続したくない場合は、家庭裁判所に申述することが重要になります。
3種類の相続方法を選択するまでの流れ
単純承認、限定承認、相続放棄のいずれを選択するかは、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に決めなければなりません。
3ヶ月間の流れは次のとおりです。
1. 被相続人が亡くなったことを知らされる
2. 戸籍調査を行い法定相続人を確定する
3. 被相続人の相続財産の調査を行う
4. 単純承認、限定承認、相続放棄のいずれを選択する
被相続人が亡くなったことを知らされる
ほとんどの法定相続人には亡くなった日に知らせが行くと思います。
そのため、一般的には亡くなった日が3ヶ月の起算点になります。
戸籍調査を行い法定相続人を確定する
被相続人が生まれてから亡くなるまでの間の戸籍謄本等を集めて、相続関係図を作成して、法定相続人を確定します。
被相続人が何度か婚姻を繰り返している場合は、前の配偶者との間に子がいることが判明したり、隠し子が発覚することもあります。
連絡を受けた時点で相続人になったことを知った人はその時点が3ヶ月の起算点になります。
被相続人の相続財産の調査を行う
被相続人の相続財産を確認したうえで、財産目録の形にまとめます。
プラスの財産はもちろん、マイナスの財産ももれなく調べましょう。
単純承認、限定承認、相続放棄のいずれを選択する
被相続人の相続財産の調査結果を見て、3つの相続方法のいずれを選択するか判断します。
単純承認と相続放棄は、相続人一人ひとりが個別に行うことができます。
限定承認の場合のみ、相続人全員が一致して行わなければなりません。
まとめ
相続方法には、単純承認、限定承認、相続放棄の3種類があります。
いずれの方法を選択するにしても、その前提として、法定相続人の確定、相続財産の調査といった事務作業を3ヶ月以内に済ませなければなりません。
被相続人が亡くなった直後に落ち着いて、相続財産の調査を行うことは難しいこともあるため、弁護士などの専門家に相談しましょう。
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