2016.11.05更新

マンション・アパートで借主が自殺した場合に,相続人に損害賠償はできるのでしょうか。

この点,借主は,貸主に対し,善良な管理者の注意義務を負い,借りた物件に損害を与えないように利用しなければなりません。

そして,借主にとって自殺をした場合に,当該賃貸物件について,その後に賃借しようという人が出現しやすくなることは容易に想像できますし,

借主に,建物内で自殺をしないように求めても酷とは言えません。

このため,マンション・アパート内で,借主が自殺することは,大家に対して全巻注意義務違反によって損害を与えたことになります。

よって,大家は,借主の相続人,連帯保証人に対して,損害賠償を請求できることになります。

 

では,どのくらいの損害賠償を請求できるかになりますが,

自殺物件であっても,時間の経過によって,人の嫌悪感も薄れていき,借りる人も現れるようになります。

このため,認められる損害は,自殺したことによって,借りる人が現れないと思われる合理的な期間の賃料,

また,合理的な期間内の自殺物件ということによって下がってしまった賃料と得られる賃料との差額,ということにあります。

 

過去の裁判例では,1年間分の賃料と,その後2年間の下がってしまった賃料と本来得られたであろう賃料の差額が損害として認められた事例,

従前賃料の半額弱の2年分を損害とした事例などがあります。

 

自殺の社会的認知度などによっては,より長い期間の賃料損害が認められることもあると考えられます。

投稿者: 棚田 章弘

2016.11.02更新

賃料を滞納したときは,賃貸借契約が当然に解除されるものとします,というような契約(失権約款)が締結され,これが有効だとすれば,

大家にとっては有利であり,借主にとってはちょっとでも賃料の支払が遅れてしまえば,住む場所を失うことになるので,きわめて不利です。

このような条項が許されるかのでしょうか。

この点,過去の裁判例では,失権約款があっても,貸主と借主の信頼関係が賃貸借契約の当然の解除を相当とする程度まで

破壊されたといえばない場合には失権約款によるよる当然の解除は認められないとしたものがあります(最判昭51・12.17判寺848・65)。

したがって,失権約款があったとしても,当然に契約を解除できるわけでもなく,単に支払が遅延した程度では解除は難しいといえるでしょう。

 

投稿者: 棚田 章弘

2016.10.20更新

借主が家賃を滞納した場合に,貸主が自由に貸した建物に入ることができる条項は有効でしょうか。

確かに貸主としては,自分の建物なのだから,例えば,家賃滞納などの場合には,自由に借主の部屋に入って借主が在室しているかなどを確認したいと気持ちはあるでしょう。

 

しかしながら,貸主が借主の同意なくして自由に当該部屋に入ることは借主の生活の平穏を害する行為になり,法律上は許されません。

正当な理由がない場合には住居侵入の犯罪を構成してしまう場合もあり得ます。

 

やはり,現在,人に建物を貸している以上は,現在使用している人がその建物を占有しているわけですから,自由に入ることを許す状況は,

公序良俗に反するものと考えられます。

緊急時など,合理的な理由を限定しない限りは,借主の部屋に事由に入れるとする条項は無効であるといってよいでしょう。

投稿者: 棚田 章弘

2016.10.17更新

取り壊し予定の建物があるけれども,一時的に賃貸するという大家さんもいらっしゃやると思います。

この場合,どのような内容で賃貸借契約を交わせばよいでしょうか。

 

借地借家法は,この点について規定を設けています。

借地借家法第39条

①法令または契約により一定の期間を経過した後に建物を取り壊すべきことが明らかな場合において,建物の賃貸借をするときは,第30条の規定にかかわらず,建物を壊すときに賃貸借が終了する旨を定めることができる。

②前項の特約は,同項の建物を取り壊すべき事由を記載した書面によってなされなければならない。

 

この条文による限り。

①法令または契約により一定期間経過後に建物を取り壊すときに契約が終了することを約すること

②取り壊すべき理由を書面に記載すること

で,取り壊しとともに契約が終了する契約にすることができます。

 

しかし,逆に,これを記載した契約書を作成しない場合には,取り壊す予定を口頭で説明しても,契約の終了を主張できないことになります。

①のみを記載しても,契約の終了を主張できませんから,きちんと②まで契約書に記載しておくことが大切です。

 

契約書を作成する際には,専門家に相談して作成しておくことをお勧めします。

投稿者: 棚田 章弘

2016.09.22更新

遺言書を作成することは死後の相続に関する争いをできる限り現象させるものでありますから,

自分が亡き後の親族紛争を防止するという点では有効な手段となりうるものです。

 

しかしながら,遺言書を作成したとしても,その遺言の中身によっては,紛争防止の目的が果たせないものもあります。

例えば,遺留分を侵害するような遺言をしてしまった場合です。

 

ここで遺留分とは遺言書をもってしても剥奪することができない相続人の利益のことをいいます。

ある相続人に自己の遺産のすべてを相続させたとしても,他の相続人には遺留分があるために,

他の相続人が遺言により遺産を受け取った相続人に対して,遺留分の請求をすることができるのです。

その結果,遺留分請求によって,新たな紛争が生じてしまい,紛争防止という遺言の目的が果たされなくなった例もままあります。

 

遺留分は,兄弟姉妹以外の相続人が有する権利です。

遺留分は,

直系尊属(父・母・祖父母など)が相続分の場合には,遺産の3分の1

その他の相続人の場合は,遺産の2分の1

とされています。

 

被相続人がA,相続人が妻C,子のC,Dという事例で考えます。

この事例で,Aが妻Cにすべてを相続させるという遺言をしたとします。

この場合,遺留分は,2分の1になります。そして,各相続人は,この2分の1を法定相続分で分け合いますので,

C(法定相続分は4分の1)が遺留分を請求した場合,

2分の1×4分の1=8分の1

がCの遺留分ということになります。

 

Aの遺産が土地建物しかない場合,遺言によって,土地建物の名義は一度はBになりますが,

Cから遺留分減殺請求権が行使された場合,土地建物の8分の1がC名義となってしまいます。

 

このように,遺言によって,遺産分割の指定をする場合,遺留分を考えずして遺言の内容を決めても,

紛争防止にならない可能性があります。

 

遺言書を作成するときは必ず遺留分について考えておきたいものです。

投稿者: 棚田 章弘

2016.09.20更新

認知症を発症している人でも遺言書を作成することはできるのでしょうか。

結論から言うと,認知症を発症していても,遺言書を作成することは可能です。

 

遺言者が成年被後見人となっている場合には,医師2名以上の立会が必要です。

医師が遺言を作成する能力を欠いていないことを遺言書に付記して押印すれば有効な遺言書となります。

 

成年被後見人でない場合,遺言者の精神状態には差があり,軽度の場合もあれば,中程度の場合もあります。

遺言書を作るときの精神状態によりますが,遺言の内容を十分理解し,作成できるだけの精神状態にあれば,

有効な遺言を作成するjことは可能です。

 

もっとも,有効な遺言書を作成できるだけの能力があったとしても,遺言者が認知症を発症している場合には,

後日になって,他の相続人から遺言が無効である旨の主張がなされる可能性は高いといえます。

このため,遺言を作成する前の段階で,主治医に遺言を作成することができるだけの精神状態にあることの診断書を作成してもらったり,

遺言者が遺言書を作成するときの様子をビデオ撮影するなどの工夫をしておくことが重要になります。

投稿者: 棚田 章弘

2016.08.29更新

遺言書があるかないかは相続手続をする際に,大きな分かれ道です。

そこで,遺言書を探すのはどうしたらよいでしょうか。

まず,自筆遺言証書の有無ですが,これは被相続人の遺品を探すしかありません。

亡くなられた後,なるべく早めに遺品整理を行い,自筆証書遺言の有無を確認しましょう。

貸金庫や懇意にしていた有資格者(弁護士,司法書士など)に預けている場合もありますので,

心当たりがあれば当たってみましょう。

 

次に,公正証書遺言の有無ですが,最寄の公証役場でその存在を確認することが可能です。

被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本類,自分が相続人であることを示す戸籍類を持参して,

問い合わせを行えば,遺言書の原本が保管されている公証役場を回答してくれます。

 

 

投稿者: 棚田 章弘

2016.08.29更新

遺言書があるかないかは相続手続をする際に,大きな分かれ道です。

そこで,遺言書を探すのはどうしたらよいでしょうか。

まず,自筆遺言証書の有無ですが,これは被相続人の遺品を探すしかありません。

亡くなられた後,なるべく早めに遺品整理を行い,自筆証書遺言の有無を確認しましょう。

貸金庫や懇意にしていた有資格者(弁護士,司法書士など)に預けている場合もありますので,

心当たりがあれば当たってみましょう。

 

次に,公正証書遺言の有無ですが,最寄の公証役場でその存在を確認することが可能です。

被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本類,自分が相続人であることを示す戸籍類を持参して,

問い合わせを行えば,遺言書の原本が保管されている公証役場を回答してくれます。

 

 

投稿者: 棚田 章弘

2016.08.25更新

自筆証書遺言の場合,遺言書に遺言執行者の指定が記載されていないものはままみられます。

民法では,遺言執行者の指定がない場合,遺言執行者の選任を家庭裁判所に申し立てることができるとされています。

しかし,遺言執行者の指定がなくても,必ず遺言執行者選任しなければならないかというとそうではありません。

遺言の内容によっては,遺言執行者を立てずとも,不動産登記を行うこともできるため,遺言執行者の選任が不要な場合もあります。

遺言執行者の指定がない場合でも,まずは,弁護士に相談し,遺言執行者が必要かどうか相談してみることがよいでしょう。

投稿者: 棚田 章弘

2016.08.11更新

遺言の一要式として,自筆証書遺言というものがあります。

これは,遺言書のすべてを直筆で書くことを要求される遺言書です。

 

では,遺言者が自ら書いてはいるけれども,家族などが遺言者が遺言を書く際に,手を添えて書かれたような遺言は,

有効な自筆遺言証書といえるでしょうか。

 

これについて判断した例として,最判昭和62・10・8があります。

最高裁は,第三者の手を添えて書かれた遺言が有効であるといえるためには,

①遺言者が遺言時に自書能力を有すること

②他人の添え手が単に始筆,改行,文字の間配り,行間を整えるために手を添えたり,添え手が筆記を容易にするために添えられたものであること

③添え手をした他人の意思が介入した形跡がないことが筆跡のうえで判定できること

が必要であるとしました。

 

このうち,①の自筆能力とは,文字を知り,これを筆記する能力のことで,

本来読み書きができたものが,病気,事故などによって資力を失ったり,手が震えたりして,他人の補助を要することになっても,

特段の事情のない限りは失われないものであると判断しています。

 

このように,家族の手を添えられて,遺言が書かれたとしても,上記①~③の条件があれば,遺言は有効になるといえます。

 

 

投稿者: 棚田 章弘

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